モスラが羽ばたくと、猛風が起こる!

モスラが羽ばたくと、猛風が起こる! 

モスラが羽ばたくと、猛風が起こる!

極彩色の翼を羽ばたいて、優雅に飛ぶモスラ。これほど美しい怪獣は、他にいないのではないかなあ……。
などと見とれていられるのも、モスラがスクリーンのなかを飛んでいるからだ。もし、あの巨大な怪獣が映画を飛び出して、大きな翼で羽ばたいたら、周囲にはモノスゴイ風が吹いて、のんきに見物なんかしてられないだろう!

『巨影都市』には、まさにそんな場面がある。
プレイヤーがビルの屋上にいると、屋上より低いところから上昇してきたモスラが、羽ばたきながら、頭上5mぐらいを通過していくのだ。
これは近い! かなりリアルな描写で、非常にオソロシイ!

この場面を見ていると、筆者は本当にそんなことが起こったらどうなるのか、どうしても計算してみたくなった。
そこで本稿では、リアルな『巨影都市』のモスラを元に、さらにリアルに考えてみよう。モスラがあの巨大な翼で羽ばたくと、いったいどんな風が吹くのか?

怖いのはモスラが去ったとき!

1992年に公開された『ゴジラvsモスラ』に登場したモスラは、翼長なんと175m。劇中の描写などから、この翼長とは、翼の左右の幅の「翼開長」だと思われる。
そのうち中央の15mが胴体の幅だとすると、片方の翼のつけ根から先端までは80m。前後の長さも、同じぐらいで80mほどに見える。

この巨大な翼で羽ばたくモスラが、頭上5mという低空を通過していったら、ものすごい風が上から吹きつけてくるのではないだろうか。

実は、その点は大丈夫そうである。

昆虫はどうやって飛んでいるのか。翅(はね)を振り下ろして空気を下に送り、その反作用で自分の体を持ち上げている……ように見えるけど、そうではない。
振り下ろすとき、翅の前端は、後端より低くなっている。振り上げるときは、前端が後端より高くなる。これによって、飛行機のプロペラと同じように、空気を後ろに送り、その反作用で前に進むのだ。
そして、自分が進むことによって前から吹きつける風の力を、翅の絶妙な形状によって、体を持ち上げる力に変えている。飛行機の翼と同じ原理だ。
つまり、昆虫の翅は、飛行機のプロペラと翼の両方の役割を同時に果たしているのだ。この飛び方は、鳥も同じ。スバラシイ生物たちですなあ。

感心している場合ではない。
上記の理由によって、モスラの真下に風は吹きつけないかもしれないが、後ろに向かって放たれることになる!
ゲームの画面では、プレイヤーはモスラが頭上を飛んでいるときは大いにビビっているが、モスラが飛び去ると、ほっとしたような後姿を見せて見送っている。
いやいや、それはマズイぞ。最も強烈な風が吹いてくるのは、いまこの瞬間なのだ!

地球最大の猛風!

ではそのとき、どれほどの風が吹くのか。

さまざまに計算すると、風がいちばん強いのは、翼の前後の幅がもっとも広いところの真後ろだ。そこで吹く風の最大瞬間風速は、次の式で求められる。

最大瞬間風速[m/秒]
=翼の前後の幅[m]÷翼の往復時間[秒]×360÷翼が動く角度

イラスト/近藤ゆたか

この方程式を使って、最大瞬間風速を求めてみよう。
前述したように、モスラの翼の前後の幅は80m。ゲームの画面では、モスラは翼を1秒で振り下ろし、1秒で振り上げている。往復時間は2秒だ。そして、翼を動かす角度は、上下合わせて90度ほど。すると、こうなる。

最大瞬間風速=80[m]÷2[秒]×360÷90=160[m/秒]

おおおっ、風速160m/秒! これは、ものすごい風だ。熱帯低気圧は、10分間の平均風速が17.2m/秒を超えると台風と呼ばれる。
これまで日本で吹いたもっとも強い風は、1966年に富士山頂で記録された風速91.0m/秒。
世界史上最強の風は、99年にオクラホマで吹いた竜巻で、風速142m/秒。
この竜巻の風速になると、列車でさえ吹き飛ばされるが、モスラが起こす風は、それより強い。すなわち、記録に残るなかでは、地球史上最強の風!!

東京スカイツリーは、平均風速70~80m/秒の風を10分間受けても倒れないように設計されている。台風などのとき、最大瞬間風速は平均風速の2倍になるから、最大瞬間風速でいえば140~160m/秒に耐えるといっていいだろう。
きわめて強靭な自立鉄塔だが、モスラが起こす風は最大瞬間風速160m/秒。耐えられるかどうか、とってもビミョ~だと思う!

人間がこの風のなかに立つと、780㎏の風圧を受ける。もう木の葉のように吹き飛ばされるだろう。
それを平然と受けながら、屋上に立ってモスラを見送るわれらのプレイヤー。よほど足腰がしっかりしているのでしょうなあ。
そういう超人でないわたくしたちは、モスラの姿が見えたら、後姿を見せる前に屋内に避難して、建物が吹き倒されないことを静かに祈りましょう。【了】